1月15日にグランフロント大阪・ナレッジキャピタルで開催されたGeiotシンポジウム2016でのパネルディスカッションの内容をお伝えします。

Panel Discussion

1.Geiotで学んだことは?

荒川:それではパネルディスカッションを始めます。私の方で最初に準備したお題は「GEIOTで学んだことは?」なんですが、それぞれのチームひとりずつ感想御願いします

荒川准教授
荒川准教授

玉田:そうですねいつもの授業と違うのはチームで作業することだったので、授業で集まって時間その時間にすること以外のところが多いのが特長かなとおもいました。私の場合は、チームのミーティングだったり、そういうところが、とても有意義でした。あとは、GEIOTで得たことを外に出すときに人との繋がりができたことが大きかったです。

玉田さん
玉田さん

荒川:時間外でもかなりの活動をしましたし、今もこうやってパネルにでてもらったりと大変ですよね。

松田:僕が特にPBLで学んだことは、何事も思ったようにはいかないと言うことですね(笑)

松田さん
松田さん

荒川:ライバルやOBチームと刺激し合えるのはよかったのでは

松田:そうですね。オムロン・コトチャレンジのときから丸一年ぐらいずっとOBチームを横目に見ながら、結構賞をとられているので負けられないなと思い、あせりというか励みになりました。常に頑張っている人が横にいるのはとても刺激なるので、来年もそうありたいですね。

2.GEIOT教育の中で難しかったことは?

荒川:カリキュラムが難しかったことはありませんでしたか?簡単すぎ?

中村:普段、モノをつくることとか技術については考えますが、ビジネスとか、作ったモノが市場に出るとかいった視点は皆無だったので、はいったとたん、そういう資料をいきなり作るのに、やったことがないけれどもやる必要があってかなり苦戦しました。でも、今後流行ると思われるサービスや企業を調べたりするうちに自分の視点が一気に変わって、実際の企業がどうやっているのか、どのようにサービスを立ち上げるのかなどが、そういった難しさのおかげで身についたと思います。

中村さん
中村さん

荒川:拘束時間が大きかったけど、時間を作るのは大変でしたか?

澤邊:やっぱり本業は研究なのですが、自分たちのやっていることが研究と直結するとは限らなくて、今回もそうですが、自分の研究とGeiotでやりたいこととの両立が一番難しかったです。というか、今でも難しいです。

澤邊さん
澤邊さん

荒川:チームでの作業の難しさはどうですか。このチームはプレゼンのときにはいつも澤邊君と玉田さんが出てくる印象がありますが(笑)、どういうふうにチーム内でバランスをとってきましたか?なかには解散したチームもあったりする中で、どういうふうにモチベーションを維持してきましたか?

玉田:うちもいろいろ、いろいろ、ありました(笑)。ただ、基本的にメンバーが皆自立していたのと、何のために、なぜ、今、ここで、これをしているのかを皆で話し合っていました。最初に集まったときもGeiotでなにをやりたいのか話し合って、みんなで満足できるようにこの授業を終わりましょうと話し合ったし、サービスについても、何故、誰のためにこれをやろうとしているのかを確認しながら進めるようにしました。

西村:僕は、今年度はティーチングアシスタントとしてかかわってきましたが、各チームリーダに呼びかけていたのは、とにかく自分が楽しいと思わないと続かないよ、ということです。何をするにしても、どういう活動をするにしても、「自分がこれをやりたい」という強い思いがなければ続かないと自分自身が感じていたので、常にそう呼びかけていました。そういう、モチベーションを上げるのが一番難しかったと感じています。

西村さん
西村さん

荒川:光井先生、離脱するチームもある中でこういう教育を続ける困難はどういうところにあるでしょうか。

光井NAISTは研究が中心で学生は皆さん忙しく、しかも違う研究室でチームを組むことも多いので、互いの時間がなかなか合いません。そんな中で、SNSを使って連絡を取り合ったり、23人で少しでも打ち合わせをしたりするとか、各チームが自発的に工夫して行く体制をどうやってつくるか、自分たちが楽しんでやれる環境をどう整えるのかが非常に重要だと思っています。NAIST10年間ベンチャー育成教育をしていて、そのなかでわかったことですが、自分たちがやる気にならないと当然続かないから、誰のためそれをつくっているのか、それをやったら誰がどう変わって喜んでくれるのかを常にイメージングしてもらうようにしています。そして、目的があって全体の中で今何をやっているのかを把握しながら、だから今やっていることはしんどいけど今やらなければならないことだと認識してもらうことをこころがけてきました。今日登壇している人たちは、こういったことを理解して身につけてくれているようで教師冥利に尽きます。そういう意味で単に起業家をつくるのではなく、本当に人として社会で役立つ人、自分の能力を自分で高められる人になってもらえるようなカリキュラムをGeiotでは続けていきたいです。

光井准教授
光井准教授

荒川:阪林君に質問ですが、今年も中には時間が合わずに離脱した人もいますが、他学科からだと、スケジュールが合わずに大変ではなかったですか?

阪林:僕は単位が目的ではなかったので、授業をうけるというよりはむしろ他の学科の人と何か作れるというところが魅力的でした。僕らのチームは言い訳ができないような雰囲気のチームで、ミーティング1回休むと取り残されるし何が何でもついていかないと、という気になりました。もちろんバイオサイエンス研究科なので情報や、IoTなどなにも知らないというのもありましたが。

阪林さん
阪林さん

荒川:そこも気になるところで、分野が違うと難しいのではと思いましたがどうですか

阪林:自分はパイロット履修生だったので技術科目は受けていませんが、他学科から参加するにはやはりハードルは高いと思います。最初はSkypeすらつかえない人もいたりもするので。たとえば、IT専門用語が多すぎるので初回にもう少しかみ砕いて丁寧に説明するなどしてもらえるといいと思います。

光井:私は、むしろ他学科の人ほど参加してもらうメリットが大きいと考えています。ITを道具としてどう使っていくかを考える上では、他学科の人の方が、視野が広くて使い道をよくわかっているはずなので、分野の違う人同士がぜひ組んでもらいたいと思っています。社会人もそういった広い視野をもっているはずですので、情報分野の人が持っているけれども気づいていない宝物をみつけていただきたいと思います。

3.他流試合の状況と感想

荒川Geiotの特色のひとつは他流試合です。今や他流試合に出ることが快感になっているチームもあるみたいですが最初はどうでしたか?

松田:去年けっこう負け癖がついていて、ひたすら出るところ出るところ負けていたので、けっこう落ち込む時期もありました。いろんな人に会うので、そこで評価されないところをいかに評価してもらえるようにするのかの切り替えが難しいなと思いました。

荒川:プレゼンをきいていると結果的にはいい経験になっていると思いましたが。

松田:本当に何も知らない学生がつくったものを世の中に出したらそっぽを向かれる、という経験を多少なりとも味わえたので、次に挑戦するときに、先ほどの青木さんの招待講演にもありましたが、いきなり大きな怪我をせずに済むと思います。小さな失敗を経験できたことは貴重だと思います。これからクラウドファンディングなどでうまくいかないことがあったとしても次の手をどう考えるかなどを予め勉強できたかなと思います。

荒川:ところで関西流のプレゼンは関東では受けないと思わない?関西でイベントやると大抵、寸劇からはいって笑いをとったりして、誰が決めているんだろうと思ぐらいみんな同じですけど。

松田:ユーモアのあるイメージ動画を作って持って行っても、東の方では受けないでむしろ怒られます(笑)。「不真面目な動画みせるよりも制御の説明をしてよ」とかいわれることもあるので、関西版とは別に作り分ける必要があるかもしれませんね。

荒川:玉田さんは、最初の印象だと恥ずかしがりやかと思ったら話してみると堂々としていますよね。最初はどうでしたか。プレゼンとかの仕事をいろいろ周りに押しつけられたりしませんでしたか?

玉田:基本的にプレゼンは好きなので他流試合でもすすんでやらせてもらっていましたが、最初はぼろくそに言われました。「何の意味あるの」だとか、けっこうきついコメントをたくさんもらって、全然、審査に通らない時期もありました。ただ、そこから得られるものもあって、そうはいいつつ、「じゃあ、できたらこういう人を紹介してください」というような御願いをするというと、皆さん、本当に紹介してくださるんですね。すごくありがたかったです。そこからいろんな人へと繋がっていったり、「あのサービスもあそこと繋がっているから実はうまくいっているので、それなら、わたしたちのサービスもそういう繋がりが作れれば実現性が上がるだろう」といった具合に社会の仕組みを知るきっかけになったり、社会人の先輩と出会う機会にもなって、他流試合はとても良かったと思っています。

4.後輩やカリキュラムに期待することは

荒川:カリキュラムについてなにか要望はないですか

澤邊:プロトタイピングがいつでも気軽にできる環境がほしいですね。Raspberry Piなどを使った試作の機会もありましたが、もっと早い時期に、より簡単にストローとかそういったものを使ってイメージ作りができるとよかったと思います。

中村:僕は、序盤で一気にハッカソン・アイデアソンなどをやってある程度アイデアを形にしておいた方が、それをきっかけにアイデアがさらにいろいろと広がって良いのではないかと思いました。

荒川:今年はプロトタイピングを含め、浅く広く何層かのカリキュラムが並行して続く形でしたが、最初にハッカソンや合宿でモノを作ってしまって、それをもとにビジネスモデルを考えたいと言うことですね。

阪林:みんなはいやがるかもしれませんが、最初に大恥をかけるような機会か何かを設けてはどうでしょうか

荒川:みんな、やめちゃったらどうするの?(笑)

阪林:恥をかく勇気ぐらいないと、アントレプレナーにはなれないと思います。自分たちも最初に大恥をかいたから今が有るのかなと思っています。恥をかかずにステップアップするよりは、途中で大恥がかけるようなイベントを用意した方がみんな伸びると思います。

荒川:それはハッカソンや他流試合になるの?

阪林:それでもいいですけど、たとえば、「突っ込みハック」って知っています? お笑い芸人みたいな乗りでおもしろおかしく笑わせることをあえてやるみたいなものですが、恥をかく勇気みたいなものが大事だとおもいます。

西村:それは関西でしかできないカリキュラムじゃないかとおもいますけど(笑)。僕は、ゲスト講師をたくさん呼ぶということもありがたいですが、各チームに寄り添ってくれるメンターをもっと充実させてもらいたいです。今年は武田先生と僕で各チームのメンタリングに巡回していましたが、できれば1チームに一人専属でメンターがいるような感じで、いつでも頼れるような人材を配置することが重要ではないかと思います。

荒川:それは教員じゃなくてベンチャー経験者とか?

西村:経験者やや年の近い先輩とか、要は気軽に相談しやすい人ですね。

5.研究と起業

荒川:両立が難しいという話がすでにありましたが、皆さんは、今もういちど始めるとして自身の研究テーマでの起業はむずかしいとおもいますか?

松田:僕たちのテーマ(IoTベルト)は、実際にそれで論文も書いたりしていますので、間違いなく、できます。僕たちのいるユビキタスコンピューティング研究室はIoTの研究そのものをやっていますが、うちだけではなく、ロボット系やその他の研究室でもアプリケーション層に取り組んでいるところは結構有って実用化に向けた研究をしているので、研究テーマをネタにした起業は十分あり得ると思います。バイオの基礎研究とかだと厳しいのかもしれませんが、アプリケーションに近い研究テーマだと、うまくいくのかなと思います。ただ、Geiotプログラムから実際の起業までまだまだ道のりがあるので、最終的な起業に向けてほんとうにやっていくときにはもっとサポートを考えてもらいたいです。そういうことがあれば、研究から起業を考える人はもっと増えるのではないかと思います。

荒川:いまの意見は情報の視点ですが、バイオの研究ネタなんかはどうですか

阪林:僕はもともと、植物工場みたいなものを作ってバイオエタノールの生産や食糧問題の解決に役立てないかと思ってバイオサイエンス研究科に入学しました。いまは植物の成長を制御する研究をしているのですが、そういう技術さえできれば起業することは可能だと思います。実際、医療系の研究室だと癌の特効薬とかを作っていて、商品化されているものもありますから全然遠くはないですが、学生主体で見ると、起業目的で研究している学生はあまりいないと思います。Geiotで学んで、自分がやっている研究もそのうち世に出るのだという視点を持って研究するということも重要だと思います。

荒川NAISTの学生全員にGeiotを受講してもらうといいですね(笑)

6.キャリアへの影響は

荒川:最後のお題ですが、ここに座っている人たちの半分以上が、実は博士課程に進む予定です。いろいろなキャリアパスを考えてNAISTに入ってきていると思いますが、Geiotを受けて何か影響を受けたりしましたか?

西村:僕はもともと起業とか全然考えずに入学したのですが、阪林くんみたいな色の濃い人と交わっていろいろやっているうちに将来像として描いていたものが変わってきたので、博士課程に進学することにしました。人との出会いが人生を変えてしまうことを実感しました。

中村:僕も入るときは就職でもいいかなと思っていましたがGeiotで学ぶうちに、他人に使われて働くよりは自分でやって行きたいという思いが強くなってきたので、博士課程に進んで起業もして二足のわらじを履く激しい生活をしていこうかというモチベーションができました。

荒川Geiotの授業では「博士課程に進みなさい」とかは一言も言ってないんですが(笑)、なぜかここにいる4人も進学して不思議だなあと思います。でも、実は、僕自身も15年ほど前にベンチャーをやっていて、もうちょっと時間がほしいなと思って博士課程に進んだんですよ。

中村:博士が博士を呼ぶというところはあるかもしれないですね。周りにいるとどんどんいろんな影響を受けてそういう気になりました。

松田:僕が中村を誘いました(笑)。僕も修士で卒業したら就職するつもりでしたが、結局、卒業してしまって起業して失敗するとあとがないじゃないですか。

荒川:保険としての進学ですか?

松田:そういう言い方もできるのかもしれませんが、自分の中ではどちらも大事です。きょうの上原さんのご講演にもありましたが、研究と企業の二足のわらじをはいて、しんどいけど無理できるうちに無理しようかなと思っています。

澤邊:僕も博士進学を予定しています。修士までは進学しようともとから決めていて、そのあとは、博士に進むか就職したとしても数年後には起業したいと早くから思っていました。今後のキャリアはまだ考えているところですが、博士課程に進む理由としては、もうちょっとこの分野の研究を深めたいのと、自分でもサービスを実践してみたいというのがあります。それが結果的に起業につながるかどうかはわかりませんが、就職して3年働いたあとよりも、このまま実際にやっていきたいという意識が強かったので、続けていこうかなと考えています。今やっている研究がそのままサービス化できるかについてはまだ模索中でこれから考えていきたいです。

玉田:私は卒業後就職します。もともと、博士に行く予定もなく起業する気もありませんでした。

荒川:就職先選びには影響しましたか

玉田Geiotに参加した結果、自分のやりたいことが明確になったということが大きくあります。Geiotを受講したきっかけは、企業のインターンシップに参加して自分の無力さに気づき、こういう、グループで何かを作り出す力というのが必要だなと実感したことです。Geiotを通して、具体的にどういう風に自分が成長したいのかであったり、その企業の中のどういうところで力をつけていきたいのかであったりということが自分の中で明確になりました

阪林:僕も就職しますが、僕たちのチームはけっこうしっかり役割が決まっています。西村にはこのまま研究室に残って技術を極めてもらいたい。もう一人は知財関係の仕事について弁理士の資格をとってもらう予定です。僕は元々商社に勤めたかったのですが、3年~5年後には会社を作って大きくしたいと思っていたので、結局選んだ就職先はベンチャー企業で、しかも副業として何をしてもいいという条件つきで選びました。ドクターに進むのは技術を磨くのにいいと思いますが、企業に就職したからといってベンチャーをやれないというわけではないので。ただ、ほとんどの企業では副業は認められていないのですが、、、

荒川:二足のわらじをはける企業を選んだんですね

阪林:はい。なおかつ、僕がやるべきところは人脈を広げたり仲間を作ったり共感してくれる人を増やすということなので、それは企業に行ってやるというのもチームワークのありかたとしていいと思っています

荒川:将来はみんながジョインして活動するのを前提にみんなを分散教育しているんですね(笑)

阪林:はい。弁理士になるのに3年かかるそうなので、3年後にはそうできるといいなと考えています。

荒川:キャリアを考えた結果、二足のわらじで博士課程進学を考えた人が結構いるというのはなかなか興味深いと個人的には思っています。

光井:たくさんの授業があるなかで、この授業を受けて人生に影響があった学生さんがいる、といことは非常に嬉しい反面、重い責任を感じます。今日は耳に痛い要望もありましたが、来年度はさらに良い授業にしていきたいです。卒業される皆さんには後輩を支えていってもらえる存在になってくれることを期待します。これからもよろしくお願いします。

荒川:それでは時間になりましたので、これでパネルディスカッションを終わります。今日は有難うございました。